Interview with the Designer
流速コーヒーフィルターもう一人の立役者 設計者インタビュー流速コーヒーフィルター
もう一人の立役者
設計者インタビュー
「樹脂製で」「流速をレバーでコントロールできる」「再現性の高い」コーヒーフィルターがあれば……。
世界トップレベルのバリスタ・深山晋作さんがご自身のお店での経験やバリスタスクールの生徒をみて感じていたことをメリタに話してくれたのがきっかけで始まった、まったく新しいコーヒーフィルターの開発。打ち合わせ、試作、抽出テスト、テイスティングを幾度となく重ね、深山さんとメリタが思い描いた最終形にたどり着いたのは、約2年後。
その長い期間、一緒に伴走し、「流速コーヒーフィルター」の形に仕上げてくださった立役者の一人である樹脂メーカーの設計者を訪問させていただき、当時のお話しをお伺いしました。

流速コーヒーフィルターの設計者・奥村さん
創業50年以上の老舗樹脂メーカー
初のコーヒーフィルター(ドリッパー)製作

― 一緒にお取組みを始めたのは2年以上前ですよね。
それ以前にはコーヒーフィルター、いわゆるドリッパーは作ったことはありましたか?
いや、まったくなかったです。
主にお弁当箱やコップなどの日用雑貨をメインに設計してますので、コーヒーに関するものは今までやったことがなかったんです。でも、ああそうか、今はコーヒー人気というか、そういうものが求められているんだな、と思いましたね。それで同僚と一緒にコーヒー器具売り場に行って、色々研究はしました。
― コーヒー器具について学ぶところから始まったんですね。
奥村さんは最初の打ち合わせからご参加していただきましたが、バリスタの深山さん、伊藤(恵未)さんとお話ししてみてどうでしたか?
細かいところにもすぐ気づくんですよ。
製作の都合上、試作品の直径を、3ミリ、大きくしてみたことがあったんです。それをお伝えする前に、伊藤さんが手に持って「あれ?ちょっとレバー動かししづらい?大きい!」って、すぐバレました。この3ミリを気づくってすごいです。すぐ元の大きさに戻しました(笑)
― 3ミリに気づくとは…すごいですね。
深山さんも伊藤さんもお店のオープン前やクローズ後などの合間に、改良点がないか、試作品で何度も何度もコーヒーを淹れていた、と聞いています。そんなにも手になじむくらい、使い込んでたんですね。
そうですね、そこまでこだわっているからこそ、そのこだわりには何としてでも応えなければならない、と思いましたね。

共同開発者・BARISTA MAP Coffee Roasters 深山晋作さんと伊藤恵未さん
当初は半年で完成予定だったが……
「納得のいくものができるまでは発売しない」
― 打ち合わせでは毎回、深山さんと伊藤さんからの使用感や改良したいポイントのフィードバッグが都度ありましたが、ご苦労された点もあったと思います。
最初、納期は半年後の予定だったんですよ。打ち合わせで話すうちに、どんどんアイデアが出てきて……そろそろタイムリミットが近づいてきたころに、メリタさんが「もう納期ではなくて、やりたいこと、ここにいる全員が納得いくものを作ろう。それまでは発売しない」と。それである程度形にはなっていたものの、理想を吸収しきれなかった設計図は一度白紙に戻しました。
― その節は大変ご迷惑を……
いや、でもそれで良かったんです。とことん突き詰めてやろうと、気持ちが切り替わりましたね。正直、あのまま製品を作っても本当に良いものはできなかったと思っています。あの時がこの「流速」のターニングポイントでしたよね。

― レバーで流速をコントロールする、というところが難しかったのではないかと思ったのですが…
流速を変えることよりも実は、一番難しかったのは、レバーを0にした時に「漏れないこと」と、「レバーを片手でも操作できる」ことの両立だったんです。
― 完全浸漬状態を作れることと、レバー操作のスムーズさの両立は難しいことなんですね
これは相反する要望で、矛盾してることなんです。止めようとするとレバーが固くなってしまうし、レバーをやわらかくしようとすると漏れるし、もう、どないしよと(笑)。バネを使うことも考えましたが、簡単にバラす・組み立てる、ができなくなったり、バネが外れてコーヒーに落ちる可能性などを考え、ボツにしました。

― 最終的には、シリコーンを採用しましたね。
そうなんです、シリコーンの柔軟性を利用できないかと考えました。ただ、これも紆余曲折ありまして……悩みましたね。毎日お風呂入りながら「う~ん」って(笑)。ある日、発想の転換で解決することができて、本当にホッっとしましたね。

お客様やバリスタからのうれしいお声を聞いて。
― ありがたいことに流速コーヒーフィルターはSCAJ2025 NEW PRODUCTS AWARD Good Product賞(一般投票部門)を受賞することができました。SNSでも使ってみた感想を投稿してくれたり、海外のバリスタからのお問い合わせもいただいています。
受賞を聞いたときは、うれしかったですね。設計者からすると感無量な部分はありました。昔、初めて製品を設計してそれがお店に並んだのを見た当時の気持ちを思い出しました。
ただこの先、正直不安もあるんですよ。更なる高みを目指した要望が来たときに対応出るのかという(笑)。大変な部分もたくさんあったんですが、やってよかったですね。このまま皆さんに使い続けてもらえたらうれしいです。

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